MYANMAR FOCUS
統治体制の再編と選挙準備/国家安全保障・平和委員会が発足
国家非常事態体制が正式に終了
ミャンマー国家防衛・安全保障評議会(NDSC)は7月31日、新たに「国家安全保障・平和委員会(State Security and Peace Commission)」を設置し、これまで国家統治を担ってきた国家行政評議会(SAC)の任務を終了させた。これに伴い、2021年2月の非常事態宣言発令以来、約4年半にわたって続いていた国家非常事態体制が正式に終了した。
この決定は、2025年1月31日に開催されたNDSC第2回会合で、SACの任期を最後の6カ月として延長した際に示唆されていたもので、7月31日の期限をもって予定通り移行が実行された形である。AP通信が伝えたところによれば、今回の非常事態終了は「選挙実施に向けた準備が整ったことを意味する」とされ、統治構造の法的正統性を確保するプロセスの一環と位置づけられている。
新設された国家安全保障・平和委員会は、ミン・アウン・フライン上級大将(国防軍総司令官兼代行大統領)を議長に、副議長にソー・ウィン副上級大将、事務総長にイェ・ウィン・ウー将軍を据え、NDSC傘下の常設機関として国家運営、治安維持、選挙管理を担う。構成メンバーには、国家計画相のウ・ニョー・ソウ、国防相のマウン・マウン・エー、内務相のトゥン・トゥン・ナウン、外務相のウ・タン・スウェー、国境担当相のヤー・ピエ、三軍参謀総長のキョウ・スワー・リンらが名を連ねている。GNLM(The Global New Light of Myanmar)が伝えたところによれば、委員会は「国家の主権・安全・法秩序・統一を守ること」を目的として設立された。
制度面でも改革が進んでいる。GNLMによると、比例代表制の導入が進められ、小政党や民族政党の議席獲得を容易にする制度設計となっている。また、選挙妨害防止法の整備により、選挙プロセスの秩序確保と法的安定性の確保が図られている。
一方、選挙管理の技術的側面では、電子投票機(MEVM)が新たに導入される見通しである。「The Irrawaddy」が報じたところによれば、首都ネピドーおよび主要地方都市での試験導入が実施されており、集計作業の効率化と不正防止に寄与すると期待されている。
治安対策としては、NDSCが全国63の町域に90日間の特別治安措置を適用し、警察および治安部隊を選挙関連施設に重点的に配備している。AP通信が伝えるところによれば、これらの地域には過去に衝突が発生した場所も含まれており、政府は「選挙期間中の安定と安全を最優先する」としている。
さらに、2025年2月には「民間治安サービス法」が施行され、私的治安会社の登録制・規制化が開始された。これにより、選挙関連施設の警備や輸送業務などに従事する業者にも国家監督が及ぶ体制が構築されている。
ミャンマー政府は総選挙の時期を「2025年12月から2026年1月の間」と明言しており、ASEAN諸国を含む関係国に対して透明性と包括性を強調している。広報官のゾー・ミン・トゥン少将も記者会見で「選挙の準備は順調に進んでおり、年末には正式な発表が行える」と述べたという。
和平交渉の側面では、全国停戦合意(NCA)署名グループとの協議が継続しており、GNLMによれば、民族武装勢力の一部は総選挙への参加に前向きな姿勢を示しているとされる。これにより、選挙の包摂性が高まる可能性も指摘されている。
国家非常事態の終了、制度改革、治安措置、国際協力の四本柱のもと、ミャンマーは法的・制度的に選挙実施へと向けた準備を本格化させている。GNLM(The Global New Light of Myanmar)が再三報じている通り、国家安全保障・平和委員会が中立性と実効性を保ちながら、選挙管理の中心機関として機能することが期待されている。