202610.20
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スー・チー氏に英国王から書籍、息子とは5年超ぶり通話

 ミャンマーで服役中のアウン・サン・スー・チー氏(81)に、英国のチャールズ3世国王から書籍などが届けられた。22日には、英国在住の次男キム・アリス氏との電話での会話も実現した。いずれもミャンマー側が写真付きで公表した。

ネピドーで電話で話すスー・チー氏とロンドンで電話で話すキム・アリス氏
(写真:ミャンマー外務省発表、GNLM 10月23日付2面掲載)

英国王から書籍2冊と封筒

 国営紙Global New Light of Myanmar(GNLM)の10月20日付(2面)によると、内務省職員が10月19日、受刑者のスー・チー氏に、英国のチャールズ3世国王から送られた書籍2冊、封印された封筒、封印された外交行嚢を届けた。GNLMは届けた場所を記していない。AP通信によると、大統領府の広報部門も同日これを発表し、ネピドーで約10分間の面会が行われた。当局は、淡い緑色の伝統衣装姿のスー・チー氏が、小さなテーブルを挟んで2人の男性と向き合う写真2枚も公開した。

書籍などの引き渡しを受けるアウン・サン・スー・チー氏。
写真:GNLM、2026年10月20日付2面。

 書籍は、土壌と食の関係を扱う『The Land Gardeners: Soil to Table』(ブリジット・エルワージー、ヘンリエッタ・コートールド著)と、ロンドンで開かれた環境展の図録『Soil: The World at Our Feet』である。APは、国王が長年、環境保護と持続可能な農業を支持してきたと説明している。封筒と外交行嚢の内容は公表されていない。AFP通信によると、大統領報道官の発表はスー・チー氏を「special female prisoner」と表現しており、当局による初の用法だという。

次男、アリス氏と20分間の通話

 ミャンマー外務省は10月22日付のプレスリリース(GNLM 10月23日付2面掲載)で、スー・チー氏が同日午後2時30分から2時50分まで、ロンドンのミャンマー大使館を通じて次男キム・アリス氏と電話で話したと発表した。同省は、この通話を人道的理由で認めたもので、赤十字国際委員会(ICRC)の基準・手続きに沿い、大統領の権限に基づく特別措置だと説明している。AFP通信によると、大統領報道官は「領事通話」と説明し、報道官室はネピドーのスー・チー氏とロンドンのアリス氏、双方の写真を公開した。AFPは、5年以上ぶりの会話だと伝えている。

 アリス氏はAFPに対し、母親の声は「かなり元気そうだった」と語った。一方で、81歳という年齢から「状況が良くなっているわけではない」とも述べた。会話は家族の話題が中心で、「通話が録音されると分かっていたため、機微な話はしなかった」という。スー・チー氏は、アリス氏自身と家族の健康を最も気にかけていたと同氏は語った。

 アリス氏はRadio Free Asia(RFA)のインタビューなどで、通話を歓迎しつつ、「1回の会話は定期的な家族との接触ではない」と述べた。19日の書籍の公表についても、APに対し、当局の限定的な情報公開が正常な状況にあるとの印象づくりに使われることへの警戒を示している。

ネピドーの指定住居に居住

 スー・チー氏は、2021年2月の非常事態宣言後に複数の罪で刑を言い渡され、現在は指定居住地で残りの刑の執行を受けている。外務省のプレスリリースによると、大統領は4月30日のカソン月満月の日(仏陀の日)に、ネピドー刑務所で服役していたスー・チー氏が、残りの刑を指定居住地で執行することを認めた。居住地の場所は公表されておらず、APは、現在もネピドー市内の非公表の場所で刑の執行を受けていると伝えている。

 スー・チー氏は2022年12月30日までに、汚職、国家機密法違反、扇動、新型コロナ対策の規制違反、無線機の不法輸入・所持、選挙不正などの罪で、合計33年の刑を言い渡された。AP通信によると、2023年8月1日の恩赦では、このうち5件(扇動、規制違反、無線機の不法輸入・所持)が減刑され、刑期は27年となった。恩赦は国営放送MRTVが報じた。

 2026年4月には、減刑が2回続いた。ロイター通信によると、4月17日の新年恩赦で刑期が6分の1短縮され、4月30日には全受刑者を対象にさらに6分の1が短縮された。弁護団の1人はロイターに、残りは「18年余り」だと述べている。

 RFAは4月30日、新年恩赦で22年6カ月に減刑され、残りは18年9カ月と報じた。Reutersは10月19日付で、「18年の刑」と表記している。AFPによると、当局は、4月に刑務所から指定居住地へ移して以降、処遇を緩和していると説明している。

 外務省のプレスリリースによると、8月3日にはICRCミャンマー代表団長のアルノー・ド・ベック氏がスー・チー氏と面会した。APは、受刑者となって以降、外部の国際的な独立人道組織と接触した初の例だと伝えている。ICRCは同日の声明で、スー・チー氏と非公開で話す機会があったと確認した。一方、訪問で得た所見や提言は関係当局にのみ、秘密裏に伝える方針で、内容は公表していない。

処遇の変更、継続は不透明

 国王からの書籍、ICRC面会、息子との通話と、外部との接触が相次いで明らかになった。ただし、いずれの発表からも、釈放など刑の執行や処遇に関する方針の変更は読み取れない。外務省は通話を「特別措置」と位置付けており、継続的な枠組みが示されたわけではない。通話の内容も、録音を前提とした家族の近況にとどまった。今後、刑の短縮や恩赦なども含め、更なる処遇の変更があるかどうかが注目される。