202507.12
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総選挙実施へ準備加速―電子投票機導入と制度整備進む

 ミャンマー選挙管理委員会(UEC)は、2025年12月から26年1月に予定される総選挙に向け、電子投票機(MEVM)の導入と段階的な実施体制の構築を急いでいる。7月8日にはネピドーでUECとミャンマー人権委員会(MNHRC)が連携会議を開催し、障がい者や高齢者、妊婦への投票支援策や選挙監視制度の枠組みについて実務協議を行ったことが報じられている。この協議では、「自由、公正、透明で包摂的な選挙」の実現を目指す姿勢が確認された。

連邦選挙管理委員会事務所で連邦選挙管理委員会とミャンマー国家人権委員会の調整会議の様子(The global NEW LIGHT of MYANMAR)

 この協議を受け、UECは都市部や治安・インフラが整った地域を皮切りに、段階的にMEVMを展開する計画を改めて明示した。6月20日の調整会議では、50,000台規模のMEVMが国内で製造され、各地域へ輸送・保管される準備が整えられており、機器の損傷防止体制も確保されていると報告された。
 ヤンゴンでは7月4日、公聴会形式においてプレス評議会を通じた報道関係者向けのデモンストレーションが行われた。UEC副事務総長は「2,500台のデモ機は既に配布済みで、本番用には50,000台以上を整備中」「投票終了後数秒で開票結果を出力し、機器には識別情報と記録時刻が搭載され、手動集計は苦情処理時に限定される」と説明した。

 7月7日にはタニンダーリ州ダウェイでMEVM操作トレーニングが始まり、約80名が研修に参加。州首長や司法関係者も同行し、操作技術の習得が進められている。加えて、2024年から延べ227名がトレーナー研修を修了し、操作指導要員の育成が全国規模で進展している。

 UECは国軍支配下の330郡区のうち267郡区での選挙実施が見込まれると発表しており、採用される選挙制度は小選挙区制と比例代表制の併用であることを明らかにしている。54政党が候補登録を済ませ、地域区および全国選挙区への参加が進んでいる。
 国際社会ではASEAN諸国、特にマレーシアが「すべての関係者が選挙に参加できる環境整備」を求め、中国やロシア、ベラルーシなど一部国は選挙を通じた国内安定化を支持する姿勢を示している。
 

 MEVM導入は技術面と制度面が並行して整備されている。都市部中心の段階的配備、メ
ディア向けのデモ実施、地方スタッフの体系的訓練、人権機関との連携による透明性強化
など、各要素が実務面で整いつつある。今後は第一フェーズの運用精度、機器輸送・保管
体制の信頼性、要員育成の広がり、監視制度の実効性が焦点となる。こうした整備が着実
に進めば、UECによる総選挙の技術的・運営的な合理性は強まり、ASEANや国際社会へ
の信頼構築に資する選挙として位置づけられる可能性が高まるとみられる。