202610.09
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米国、ミャンマー政府との直接接触拡大

詐欺対策・重要鉱物で関与、制裁は継続

 米国のトランプ政権が、ミャンマー政府との直接接触を広げている。米国人実業家の解放交渉を機に、オンライン詐欺対策やレアアースをめぐる協議へと対象が広がった。制裁の枠組みを維持したまま、自国の利益に関わる課題で直接関与する方向へ、政策を修正している様子がうかがえる。

大統領との協議

 ロイター(10月8日)によると、マイケル・バンス米国務次官補(情報調査担当)は9月15〜16日、ネピドーでミン・アウン・フライン大統領との協議に参加した。ロイターは、2021年の非常事態宣言後で最高位の接触と位置付けている。6月には東京でも両国の当局者が協議し、関係者によれば米財務省、国土安全保障省、国防総省の当局者も参加した。ミャンマー側の出席者は明らかになっていない。

 9月の訪問の直接の目的は、6月11日にヤンゴン空港で拘束された元在ミャンマー米国商工会議所会長、アダム・カスティーヨ氏の解放だった。国営紙Global New Light of Myanmar(9月17日)は、同氏が16日夕にネピドー国際空港から国外退去となったと報じた。一方、バンス氏の参加や協議の経緯は、ロイターが米当局者や関係者ら7人の取材で伝えたもので、米国務省は同氏の役割についてのコメントを避けた。

詐欺対策

 協議の重点は、米国人を標的とするオンライン詐欺拠点への対応だ。ロイターは、関係者2人の話として、FBIもミャンマー当局と直接接触したと伝えた。米国務省は、米国の利益に関わる問題でミャンマーの各勢力と関与し、暴力の停止と政治犯の釈放も求めていると説明している。トミー・ピゴット報道官は声明で、問題は無視せず向き合ってこそ解決できるとの考えを示した。

 背景には米国内の被害拡大がある。米財務省は2025年9月8日、東南アジアの詐欺組織による米国人の2024年の損失が少なくとも100億ドルに上るとの米政府推計を示し、ミャンマー東部シュエコッコで活動する9件(個人・企業)を制裁対象に加えた。同省は、拠点が制裁対象のカレン民族軍(KNA)の保護下で運営されていると指摘している。ロイターは、研究者の指摘として、収益の一部が軍に流れ、取り締まりへの姿勢に疑問が出ているとも伝える。協議の成果は、実際の取り締まりで判断する必要がある。

重要鉱物

 ロイターは2025年7月28日、トランプ政権が、ミャンマー産レアアースを中国から切り離すため、対ミャンマー政策を大きく変えうる複数の提案を聞き取っていると、関係者4人の話として報じていた。提案には、カチン独立軍(KIA)との取引をめぐるものも含まれていた。10月8日の報道によると、資源は今回の協議でも議題となっている。ただし米当局者は、鉱床の多くが民族武装勢力の支配地域にあることや、中国が米国の関与を挑戦とみなしうることを課題として認めており、採掘や供給の契約成立は確認されていない。

制裁の現状

 米国は2025年7月24日、軍指導者に近いとされる3社と4個人の制裁指定を解除した。米財務省は通常業務の中での削除と説明し、米当局者は政策全体の変更ではないと述べていた。

 一方、制裁の基盤は維持されている。トランプ大統領は2026年2月3日付の通知で、2021年2月の大統領令14014に基づく、米国の対ミャンマー国家緊急事態を、さらに1年間継続すると議会に通知した。国際緊急経済権限法に基づき、ミャンマー情勢を米国の安全保障への脅威と位置付けるもので、制裁の法的根拠となる。大統領は、必要に応じて圧力を調整する用意があると表明している。ミン・アウン・フライン大統領への制裁も続いている。

今後の焦点

 米国の動きは、孤立化を中心とする政策から、制裁と直接協議を併用する政策へと実質的に移りつつあるとみられる。ただし、全面的な関係正常化を決めた段階とは判断できない。今後の焦点は、詐欺拠点の閉鎖や資金網の遮断で成果が出るか、重要鉱物の協議が具体化するか、制裁の運用が変わるかの3点にある。ミャンマー政府にとっては外交関係を広げる機会となるが、米国の関与がどこまで進むかは、個別課題での成果と米国内の政治的評価に左右される。

(主任研究員 宮野弘之)

出典:ロイター(2026年10月8日、2025年7月28日)/米財務省発表(2025年9月8日)/米財務省の制裁指定解除通知(2025年7月24日、AFP報道)/Global New Light of Myanmar(2026年9月17日)/米国務省回答(ロイター報道に基づく)/国家緊急事態継続の通知(2026年2月3日付、連邦官報2026年2月6日)