ミャンマー・マレーシア首脳会談、送還と7分野協力で一致
ミャンマーのミン・アウン・フライン大統領は10月7~8日、マレーシアを公式訪問し、8日にプトラジャヤでアンワル・イブラヒム首相と会談した。アンワル首相は同日の共同記者会見で、貿易、投資、教育、農業・食品、エネルギー、医療、人材育成を中心に、国民本位の協力を強化することで両国が一致したと説明した。マレーシアに滞在するミャンマー人の送還も主要議題となり、ミャンマー側が費用を負担して受け入れる方針が確認された。ベルナマ通信(10月8日)、ロイター(同日)、ミャンマー国営紙Global New Light of Myanmar(GNLM、10月9日)などが伝えた。
帰国者1万493人
アンワル首相は共同記者会見で、これまでに航空便や海軍艦船でミャンマーに帰国した自国民は1万493人に上ると述べ、海軍の協力に謝意を示した(ベルナマ通信、ニュー・ストレーツ・タイムズ紙、10月8日)。このうち1,476人は、9月29日に始まった送還の第1段階で、ミャンマー海軍の艦船3隻により帰国した(ビジネス・トゥデイ、10月6日)。
アンワル首相によると、ミン・アウン・フライン大統領は、入管収容施設にいる3,000~4,000人についても、確認が済み次第、受け入れる意向を示した。今後の手続きはマレーシア内務省とミャンマー側の担当当局が協議し、国籍や犯罪歴を含む記録を関係当局が確認したうえで進める(ベルナマ通信)。アンワル首相は、大規模な送還を自国の費用で受け入れる国は極めてまれだとして、ミャンマー側に謝意を述べた。
ベルナマ通信は、両首脳がすべての民族を対象に、自発的で、尊厳と安全が確保される形での送還について協議したと伝えた。ロイターは、今回の会見で両首脳がロヒンギャの送還に言及しなかったと報じた。
海軍艦船の派遣
ミン・アウン・フライン大統領は共同記者会見で、「確認の取れた自国民をできるだけ早く連れ戻す」と述べた(AFP、10月8日)。ロイター(同日)によると、大統領は「現在は天候が良好なので、海軍艦船を派遣する」と語り、マレーシア側に正式な要請を行う考えも示した。
大統領府のカイン・カイン・ソー副大臣兼報道官は、選別後もなお3,000人超が帰国を待っており、天候が良好なうちに帰国させる必要性を大統領が協議したと説明した(GNLM、10月9日)。
国民本位の協力
アンワル首相は、両国が国民本位の協力に重点を置いて二国間関係を強化することで一致したとし、対象として貿易、投資、教育、農業・食品、エネルギー、医療、人材育成を挙げた(ザ・スター紙、ベルナマ通信配信、10月8日)。同首相は「近年の情勢が、長く良好だった関係の進展を妨げてきた」としたうえで、東南アジア諸国連合(ASEAN)の枠組みを念頭に置きつつ、大統領と政府が国内で必要な改革や政策調整に取り組んでいることも理解していると述べた。二国間の経済活動は前年比140%超増加したとも説明した。
GNLM(10月9日)によると、両首脳の協議では、貿易・投資の促進、農業と付加価値のある製品づくり、経済特区への投資機会、中小零細企業、金融分野の協力が話題に上った。大統領府報道官は、マレーシアの実業家が物流・港湾関連事業、鉄鋼の川下産業、パーム油の栽培・精製に関心を示したと説明した(同)。
ミャンマー側の提案
GNLM(10月9日)によると、大統領は、昨年の両国間貿易額が16億米ドルを超え、マレーシアがミャンマーにとって第4位の貿易相手、投資国としては48カ国・地域中第9位だと紹介した。そのうえで、経済フォーラムや企業間商談会の開催、ビジネス・貿易に関する知見共有、中小零細企業の国際市場進出に関する共同研究、マレーシアの見本市への参加、電子商取引とデジタル販促基盤での協力を提案した。
農業分野では、マレーシアの豊富な研究経験を活用し、農業・畜産研究の協力を深めたいとした。教育では、西ヤンゴン工科大学と情報技術大学がそれぞれマルチメディア大学と覚書を結び、教育・研究の協力を進めていると説明した。医療分野では、病院・診療所サービス、医薬品製造、医療機器、医療技術と技能開発を協力候補に挙げた。
在留労働者16万人
大統領は、ミャンマー側の記録ではマレーシアに16万人超のミャンマー人労働者と家族が滞在しているとして、職場の安全、権利保護、社会福祉の改善への協力を求めた。あわせて、合法的で秩序ある入国・就労経路の整備、搾取の防止、査証・就労許可手続の円滑化、既存の労働協定・覚書の実施について協議したい考えを示した(GNLM、10月9日)。
治安・防衛
GNLM(10月9日、ミャンマー国営通信MNA配信)によると、両首脳は、オンライン詐欺・賭博、人身取引、麻薬、国境を越える犯罪への対応のほか、防衛・安全保障分野の二国間協力について意見を交わした。大統領は、7月31日にオンライン詐欺対策法を制定したと説明し、詐欺や麻薬の問題は主に少数民族武装組織が優勢な国境地域で起きており、地域各国の情報共有と取締機関の連携が必要だと述べた。ただし、公表された説明の範囲では、新たな防衛協定の締結や個別事業の実施決定までは示されていない。
ASEAN復帰への言及
ロイター(10月8日)によると、アンワル首相は、ミャンマーのASEANへの全面的な復帰に向け「可能な限りのことをする」と述べた。GNLMによると、同首相は会談で、ミャンマーはASEANにとって重要な国だと語った。ミン・アウン・フライン大統領は、ASEANの「5つのコンセンサス」について、国内事情を踏まえて最善の成果を得るべく努めているとし、ミャンマー主導・自主の姿勢でASEANとの関係を強化する考えを示した。
ミャンマー側の報道官は、アンワル首相からインドネシアとブルネイが大統領の招待を計画していると聞いたと説明した(GNLM、10月9日)。報道官によれば、今回は大統領の9回目の外遊で、ASEAN加盟国としては5カ国目、海洋部東南アジアでは初の訪問となった。
出典:ベルナマ通信(10月6日・8日)、The Star(10月8日)、New Straits Times(10月8日)、Malay Mail(10月8日、AFP配信を含む)、ロイター(10月8日、Daily Sabah転載)、Business Today(10月6日)、Global New Light of Myanmar(10月9日、MNA配信を含む計4本)。