中緬関係の新段階入りを強調―中国メディアに大統領
ミャンマーのミン・アウン・フライン大統領は2026年6月19日、5日間の中国国賓訪問の最終日に、中国中央テレビ(CCTV)と鳳凰衛視(フェニックスTV)の2局によるインタビューに個別に応じた。大統領はインタビューで、新政権発足後初の訪中を総括し、両国関係が新たな段階に入ったことを強調し、中国語圏の主要視聴者にミャンマー新政権の姿勢を示した形だ。

「パウッパーの絆」と新政権の立場を強調
インタビューでミン・アウン・フライン大統領は一貫して、中緬間の伝統的友好関係を象徴する「パウッパー(胞波)の絆」に言及しつつ、新政権の対中姿勢を明確に示した。中国外務省が公表した首脳会談の公式記録によれば、大統領は「ミャンマーは中国の長年にわたる開発・安定・平和・和解への支援に感謝しており、一つの中国の原則を断固として堅持する」と表明した。CCTVの報道でも、大統領が台湾独立に反対する立場を明示したことが伝えられている。
また、中国の第15次五カ年計画(2026~2030年)に触れ、「ミャンマーを含むアジアの隣国にとって重要な機会をもたらすものだ」と述べ、経済協力の深化に強い期待を示した。訪問中に上海で開催されたミャンマー・中国投資貿易ネットワーキング・サミット(MCITP-2026)の席上では、ミャンマーを「中国・インド・東南アジア広域を結ぶランドブリッジ」と位置付け、中国企業による投資拡大を呼びかけた。
経済回廊の推進と安全確保を約束
首脳会談(6月16日)の内容と連動する形で、インタビューでも中緬経済回廊(CMEC)の共同建設に向けた意欲が繰り返し表明された。習近平主席が「旗艦プロジェクト」と称するCMECをめぐり、ミン・アウン・フライン大統領は「中国企業および人員の安全確保に最大限努力する」と約束した。チャウピュー深海港やマンダレー・ムセ間鉄道など、紛争による停滞が続く主要プロジェクトの再起動が両国の懸案であり、大統領はその進展に自信を示した姿勢を見せた。
また、ミャンマー国内で依然深刻な問題となっている電信詐欺・オンラインギャンブル・麻薬取引の取締りについても「中国と緊密に連携し断固として対処する」と重ねて強調した。これらの問題はミャンマー北部国境地帯の不安定な状況と密接に結びついており、北部シャン州などにおける停戦合意の推進とともに、中国側が最も重視する事案の一つとなっている。
インタビューでまた、大統領は、習近平主席が提唱する4大グローバルイニシアティブ——GSI(グローバル安全保障イニシアティブ)、GDI(グローバル開発イニシアティブ)、GCI(グローバル文明イニシアティブ)、GGI(グローバル・ガバナンス・イニシアティブ)——への全面的な支持を表明した。今回の訪中では、これらイニシアティブへの賛同MoU(覚書)が締結されており、25年9月の成都インタビューに続く支持表明となる。ASEAN・国連・SCO・BIMSTECなど多国間の枠組みでの中国との連携強化にも意欲を示した。
中国メディアを通じた対外発信の意義
今回のインタビューが国賓訪問の最終日に設定された点は注目に値する。5日間にわたる一連の行事——21発礼砲付きの国賓歓迎式典(6月16日)、習近平主席・李強首相・趙楽際全人代常務委員長との会談、18本のMoU署名、上海での投資促進サミット出席、中国鉄路建設股份有限公司(CRCC)の視察、復興号高速鉄道乗車体験——を経た総括として、CCTVと鳳凰衛視という中国の国営・衛星メディア2局が帰国直前に単独取材する形をとった。
CCTVは中国国内外に向けた公式発信の主要媒体であり、鳳凰衛視は香港を拠点として中国語圏・香港・台湾・東南アジアの華人社会にリーチを持つ衛星局だ。この2局が新政権トップのインタビューを揃って放映することは、ミャンマー新政府の対外的な存在感の発信として一定の効果を持つとみられる。中国国内の視聴者にとっては、中緬関係の「新段階」を視覚的に印象づける映像素材にもなる。
ミン・アウン・フライン大統領は4月10日の就任後、インドへの公式訪問(5月30日~6月3日、モディ首相・ムルム大統領と会談)を大統領就任後初の外国訪問とし、今回の訪中はその2度目にあたる。日本や欧米主要国との関係が依然として限定的な中、インド・中国という二大隣国への相次ぐ接触は、新政権の外交地盤を周辺国との「現実外交」から積み上げていく姿勢を示すものだ。中国国営・衛星メディアへの同時露出は、その戦略的発信の一環として位置付けられる。
メディア協力の制度化と射程
今回の訪中では、メディア分野のMoUが締結されたことも注目される。放送・テレビ・ネットメディア協力の拡大を定めたMoUが署名された。2026年5月には中国共産党宣伝部・国家ラジオテレビ総局(NRTA)のトップがミャンマーを訪問し、国営MRTVとの協力関係を確認したばかりだ。CCTV・鳳凰衛視によるインタビューは、こうした制度的なメディア連携の強化と軌を一にする動きとして捉えられる。今後、記録映像やドキュメンタリーの共同制作を含む対外発信の枠組みが、両国間でどのように具体化されるかが注目点の一つとなる。
※パウッパー(Pauk-Phaw):「同腹のきょうだい」を意味するビルマ語。中緬両国が1950年代以来、両国間の特別な友好関係を表すために用いてきた伝統的表現。中国語では「胞波(pāo bō)」と表記する。※CMEC(中国・ミャンマー経済回廊):中国雲南省の昆明からミャンマーのチャウピュー深海港を結ぶ総距離約1,700kmのインフラ回廊構想。一帯一路(BRI)の重要プロジェクト。※GSI(グローバル安全保障イニシアティブ):2022年習近平主席が提唱。内政不干渉·主権尊重を軸とした新たな安全保障協力の枠組み。※GDI(グローバル開発イニシアティブ):2021年習近平主席が提唱。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の加速を旗印とした開発協力構想。※GCI(グローバル文明イニシアティブ):2023年習近平主席が提唱。文明の多様性尊重を訴える文化外交の枠組み。※GGI(グローバル・ガバナンス・イニシアティブ):2025年習近平主席がSCOサミットで提唱。国際機関の改革と「公正な国際秩序」の構築を求める5項目の提言。
【出典・参照】中国外務省公式記録(2026年6月16日)、CCTV英語版(2026年6月17日)、CGTN「Myanmar remains committed to peace and cooperation」(2026年6月20日)、ミャンマー大統領府(PPIB)、GNLM(2026年6月16~19日)、The Irrawaddy(2026年6月19日)、The Diplomat(2026年6月16日)ほか