ニュース
【国際】ASEAN首脳会議、ミャンマー情勢で恒久特使設置と停戦拡大を決議 ミャンマー側は「建設的関与」を強調
25年5月26日から27日にかけてマレーシア・クアラルンプールで開催された第46回東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議では、ミャンマー情勢の打開に向けた新たな取り組みが打ち出された。加盟国は、恒久的な特使の設置や全国的な停戦の拡大を通じて、包括的な対話の実現を目指す姿勢を示した。
会議では、ミャンマー問題に特化した恒久的なASEAN特使の設置が提案された。これまでの特使は議長国が毎年任命していたが、任期3年の恒久的な特使を設けることで、持続的かつ一貫した外交関与を実現しようとする動きが浮上している。マレーシアのモハマド・ハサン外相は、特使の役割について「信頼醸成と包括的対話の促進が期待される」と述べた。
共同声明の中でASEAN首脳は、ミャンマーでの暴力の終結に向け、現在限定的に実施されている停戦を全国に拡大するよう呼びかけた。声明では、「暴力の終結に向けた第一歩として、持続的な停戦の拡大が必要である」と強調された。また、関係者間の信頼醸成を通じて、包括的な国民対話の開催を目指す意向が示された。
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は、ミャンマーの軍事政権および国民統一政府(NUG)との非公式な接触を行っており、「対話の機が熟している」と述べ、ASEANとしての関与を強化する姿勢を示した。
これに対し、ミャンマー外務省は、同国代表団が今回の会議に出席し、ASEANの長期戦略「2045年ビジョン」に署名したと発表した。声明では、「地域の枠組み内での建設的な関与を引き続き重視する」と表明した。
「ASEAN2045:我々の共有する未来(Our ASEAN Future)」
- 政治・安全保障の強化:国際法尊重、平和的解決の推進
- 経済統合:デジタル経済、グリーン成長を軸とし、世界第4の経済圏を目指す
- 包摂的社会の実現:教育・保健・文化の向上、地域格差の是正
- 制度と連結性の強化:インフラとデジタル接続性の拡大、ASEAN機構改革
◇ASEAN首脳会議、中国・中東諸国とも個別会合
今回の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議では、主要議題であるミャンマー情勢に加え、中国や中東諸国との個別会合が注目を集めた。各国は経済、安全保障、地域秩序を巡る課題について協議を重ね、ASEANの多極外交路線が明確になった。
中国との首脳級会合では、地域の平和と安定を支える「協調的パートナーシップ」が強調された一方で、南シナ海問題が緊張感を伴って議論された。フィリピンやベトナムなど複数の加盟国が、中国の人工島建設や軍事拠点化に懸念を表明し、「国連海洋法条約(UNCLOS)」に基づく航行の自由と法の支配を改めて要求した。これに対し中国側は、問題は「関係当事国間の協議で解決すべき」と主張しつつ、ASEANとの対話継続の重要性は認めた。
一方で、経済分野では協力の機運が高まっており、スマートシティ開発、グリーンインフラ、人民元決済の拡大などが協議され、「一帯一路」構想とASEAN域内計画との整合性を探る動きも見られた。
湾岸諸国を中心とする中東諸国ともそれぞれ会合が開かれ、エネルギー安全保障や経済連携が主要議題となった。特に、サウジアラビア、UAE、カタールなどが、ASEAN諸国との再生可能エネルギー協力や水素エネルギー分野での技術移転に意欲を示した。また、中東の投資機関によるASEAN域内のインフラ整備・工業団地投資も議題となり、双方の経済関係が「資源供給国と成長市場」という枠を超えつつあることが浮き彫りとなった。
一方、パレスチナ情勢や紅海の安全保障をめぐる意見交換も行われ、中東側はアジア・太平洋地域との「南南協力による新たな安全保障対話」の構築を呼びかけた。
■ 対立回避と多極戦略
これらの会合を通じて、ASEANは従来からの「非同盟・中庸路線」を堅持しつつも、経済連携は深化させ、地政学的な圧力には抑制的態度で臨むという二重戦略を強めた形となった。シンガポール・ストレーツタイムズによると、ASEAN関係筋は「経済と安全保障のバランスをどう取るかが最大の課題。ASEANは今後、調整者・仲介者としての役割を一層問われる」と述べている。