大統領、ロシア、ベラルーシ公式訪問

Ministry of President’s Office Myanmar
ミン・アウン・フライン大統領は8月17日から19日までロシアを、20日から21日までベラルーシをそれぞれ公式訪問した。ロシアでは18日にクレムリンでプーチン大統領と会談し、対西側制裁措置への対抗宣言のほか、電力・石油ガス・LNG・原子力・衛星測位など計10の省庁間・部局間文書に署名した。ベラルーシでは21日にルカシェンコ大統領と会談し、法律扶助・選挙管理・メディア・宇宙分野の協力文書に署名したほか、ミンスクでの大使館開設や両国の経済フォーラムを通じて実務協力の拡大を確認した。今回の訪問は、4月の大統領就任後のインド・中国・ラオス・タイに続く一連の外遊の延長線上にあり、8月上旬のタイ公式訪問から2週間足らずでの実施となった。
10文書に署名
ミャンマー大統領府によると、大統領は8月17日朝、ネピドーから閣僚らを伴いロシアに向けて出発した。大統領府声明は、訪問の目的について両国の友好・緊密な関係の強化と戦略的協力の拡大にあると説明し、特に安全保障と経済分野での協力進展を挙げた。クレムリンの発表によると、両首脳は18日の会談後、共同声明を採択するとともに、省庁間・部局間の10文書に署名した。文書には「一方的強制措置の悪影響への対抗・緩和・是正に関する宣言」(対西側制裁対抗宣言)のほか、電力、石油・ガス、電子産業、デジタル技術、情報通信技術、文化・芸術、衛星測位および有人宇宙探査、コスパス・サーサット捜索救助システム、近地球空間の危険事象自動警報システム(ASPOS)の各分野の覚書が含まれる。このほか、ロシア連邦独占禁止庁とミャンマー競争委員会の協力覚書、RC-インベストメンツ基金とミャンマー電力エネルギー省の間の2026年4月16日付LNG長期供給覚書の実施に関する議定書も署名された。防衛分野の新規文書の署名は発表されておらず、2026年2月に既に署名済みの5年間の軍事協力協定(内容非公表)の枠組みが継続する形となった。
エネルギー協力で一致
クレムリンが公表した会談後の発言録によると、プーチン氏はエネルギー分野を両国協力の重要領域と位置づけ、ミャンマー南部での発電所・製油所の共同建設が検討中であるほか、ロシア企業による沖合を含む炭化水素の探査・生産への参加、国内消費および近隣国向け再輸出を見込んだLNG輸出に触れた。あわせて、前年署名済みのロシア設計原子力発電所建設に関する政府間協定を両国の旗艦事業と位置づけたほか、製鉄所・有機肥料製造施設の建設が進行中であること、大型船舶に対応可能な深海港をミャンマー南岸に建設する計画についても言及した。プーチン氏はまた、両国間の商取引の3分の2がロシア・ルーブル建てで決済されていると述べたほか、サイバーセキュリティやデータ保存分野での技術協力、ウラジオストクへのミャンマー総領事館開設予定、ヤンゴンでのロシア正教会建設への合意についても紹介した。
ミン・アウン・フライン大統領は発言録の中で、会談で国防、観光、安全保障、農業、保健医療などの分野について協議したと述べ、ミャンマーが主要市場に近い地理的優位性と資源、1300マイルを超える海岸線を有するとして投資を呼びかけた。大統領はこの訪問中に12件の契約に署名したと述べ、両国が国際・地域情勢について引き続き連携する意向を示した。大統領はこのほか、ロシア首相および国家会議(下院)議長とも会談し、ロシア仏教の中心地であるトゥバ共和国も訪問した。訪問にあわせて8月19日にはモスクワのプレハーノフ・ロシア経済大学でロシア・ミャンマー経済フォーラムが開催され、ミャンマー大使館とロスコングレス財団の共催で、ロシア側から80社超、130人超の企業関係者が参加した。
経済フォーラムで契約調印

大統領は8月20日朝、モスクワからベラルーシの首都ミンスクへ移動した。ルカシェンコ大統領の招待による公式訪問で、空港では同国のカランケビッチ副首相らが出迎え、パンと塩を献呈する伝統儀礼が行われた。大統領は到着後、独ソ戦(大祖国戦争、1941~45年)の戦没者を悼む勝利記念碑に献花したほか、ベラルーシのトゥルチン首相の表敬を受けた。同日、ベラルーシ・ミャンマー経済フォーラムがミンスクで開催され、企業間契約の調印式も行われた。ベルウェスト社およびルーチ・ホールディング(ミンスク製革協会)とミャンマー企業アジア・ポイント・オブ・ポテンシャルとの間で製靴工場設立に関する覚書が、自動車メーカーMAZ(ベルアフトMAZホールディング)とイースタン・バレー・パートナーズ社との間でMAZ車両の現地組立てに関するライセンス契約がそれぞれ署名された。大統領はこのほか、化学肥料大手グロドノ・アゾトを視察し、肥料・工業化学品・繊維分野の協力について協議した。
法律・選挙分野で署名
両首脳は8月20日夜に非公式形式で会談・夕食をともにした後、21日に独立宮殿で制限・拡大両形式による公式会談を行った。ベラルーシ大統領府(BelTA)によると、会談を受けて貿易・経済・科学技術・法律などの分野で文書パッケージが署名された。民事・経済事件に関する相互法律扶助条約および刑事事件に関する相互法律扶助協定のほか、両国の選挙管理機関間の覚書、戦略研究機関間の覚書、メディア間の覚書、ベラルーシ国立大学とミャンマー宇宙庁の間の覚書などが含まれる。
協力深化で一致
ルカシェンコ氏は会談で、両国協力の方向性は2026~2028年ロードマップに定められているとした上で、2027年には全てのプロジェクトを書類段階から実行段階に移す考えを示し、両国での大使館開設(2026年内)を協力推進の柱に挙げた。ミン・アウン・フライン大統領は、農業・工業(トラクターおよびMAZ車両の供給)、製薬、教育(ベラルーシでのミャンマー人留学生受け入れ)、投資分野での協力進展に謝意を示し、地理的距離はあるものの両国は相互信頼に基づく友好国であると述べた。
(注)本稿は、ロシア大統領府(クレムリン、en.kremlin.ru)、ベラルーシ通信社(BelTA)、ベラルーシ大統領府、ミャンマー大統領府、AFP、ロイター、AP通信、Irrawaddy、bne IntelliNewsの各報道・発表内容を基に作成した。