202506.02

New ! ミャンマーで違法薬物の栽培と取引が急拡大

違法薬物の栽培と取引が急拡大
押収額63億チャット、避難民がアヘン栽培に従事、国連は過去最高の押収量と指摘 ―

 ミャンマーにおける違法薬物の栽培および密輸が急速に拡大している。5月31日付
『Global New Light of Myanmar』によると、ミャンマー警察当局はネピドー近郊のレウェ郡区で大規模な捜索を実施し、総額63億チャット(約3,000万米ドル)に相当する違法薬物を押収した。対象物にはメタンフェタミン錠剤(ヤーバ)やヘロイン、覚醒剤原料が含まれており、同地域が密輸の集積地であることが裏付けられた。

Global New Light of Myanmar May 31, 2025

 一方、5月30日付の『Al Jazeera』は、内戦による避難民の中にアヘンの栽培に従事する者が多数存在していることを報じた。シャン州やカヤー州など、軍政の統治が及ばない山岳地帯では、貧困にあえぐ住民が反政府勢力や麻薬密売組織に雇われてポピー(ケシ)畑での労働に従事しており、児童労働や強制労働の事例も報告されているという。
 このような状況は、国際的にも深刻に受け止められている。2025年5月28日付『APNews』によれば、国連薬物犯罪事務所(UNODC)は最新の報告書で、2024年に東南アジアで押収されたメタンフェタミンの総量が236トンに達し、統計史上過去最高となったことを明らかにした。中でもミャンマーのシャン州は「アジアの麻薬生産の中心地」とされ、同地域で製造される高純度のクリスタル・メタンフェタミンは、タイ、ラオス、マレーシアを経て、遠くオーストラリアや日本にまで流通している。


 UNODC報告書はまた、「ミャンマー国内の生産はさらに精緻化され、以前に比べて摘発を避けるための手段が巧妙化している」と指摘。軍政による統治の空白地帯が、麻薬ビジネスの温床となっている現状を危惧している。
 

 ミャンマーの麻薬問題は、治安対策や薬物政策にとどまらず、内戦、難民、経済崩壊、人権侵害といった多面的な社会的課題の反映である。国際社会と地域諸国による包括的な支援体制の構築と、長期的な国家再建戦略が不可欠である。