202511.04
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ゾウ・ゾウ氏、FIFA社会的責任委員会委員長に就任  

Photo: Myanmar Football Federation (MMF)

 FIFA(国際サッカー連盟)は、ミャンマーサッカー連盟(MFF)会長のゾウ・ゾウ氏を、2025年から2029年の任期でFIFAサッカー社会的責任委員会の委員長に任命した。これは、10月にスイス・チューリッヒで開催されたFIFA理事会において正式に承認された。イレブンメディアなどが伝えた。

 FIFA社会的責任委員会は、自然災害や社会的困難に直面する国々への支援活動の調整および低所得国におけるサッカー開発の推進を担う、FIFAの中核的な社会貢献部門という。副委員長には、元アルゼンチン代表のハビエル・サネッティ氏が就任し、委員長・副委員長を含む23名の国際的なメンバーで構成される。

 ゾウ・ゾウ氏は、ミャンマーの有力財閥Max Myanmar Groupの創業者であり、建設、ホテル、セメント、物流、エネルギーなど多岐にわたる事業を展開してきた。現在も影響力を保ち続ける一方、教育・医療・スポーツを通じた社会貢献活動にも注力しており、慈善財団を通じて国内の学校建設や医療支援を行っている。

 サッカー界では05年からMFF会長を務め、若手育成や女子サッカーの強化、スタジアム整備などに尽力。アジアサッカー連盟(AFC)では上級副会長を務め、AFC社会的責任委員会の委員長、Dream Asia財団の理事としても活動している。

スポーツが開く新たな外交

 FIFAは、政治的中立性を原則とする国際スポーツ団体であり、各国の政治状況に左右されず、サッカーを通じた社会的貢献を推進する立場を取っている。今回の人事も、「個人の専門性と国際的な経験を重視した選任」であり、ミャンマーという国の政治的背景に対する評価とは切り離して考えるべきだ。

 このような姿勢は、スポーツが外交の補完的手段として機能する可能性を示している。たとえば、2024年には日本サッカー協会(JFA)がミャンマーサッカー連盟とのパートナーシップ協定を締結し、指導者養成や女子サッカー強化などの分野で協力を進めている。しかし、在日ミャンマー人団体からは協定の見直しを求める声も上がっており、スポーツ外交が抱える課題も浮き彫りになっている。

 ゾウ・ゾウ氏の委員長就任は、ミャンマー国内外のサッカー関係者にとって希望の象徴となる可能性がある。FIFAはその理念に基づき、公平で包括的な社会貢献を推進する姿勢を今後も貫いていくだろう。政治的困難を抱える地域においても、スポーツが果たすべき役割は明確だ。外交の補完手段としてのスポーツの力が、今まさに問われている。