202608.04
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アウン・サン・スー・チー氏、赤十字代表と面会

ミャンマー大統領府は26年8月3日、軟禁中のアウン・サン・スー・チー氏(81)が同日朝、赤十字国際委員会(ICRC)ヤンゴン代表部のアルノー・ド・ベック首席代表と首都ネピドーで面会したと発表した。ロイター通信や国営メディアの報道によると、外国関係者との面会が公にされたのは2021年の政変以降で初めてとみられる。ただ、面会の具体的な場所や時間、会話内容は公表されていない。

拘束後初めて外国要人と接触、写真も公表

ネピドーで面会するスー・チー氏とド・ベックICRC代表(写真はミャンマー情報省提供)

情報省が公開した写真4枚のうち2枚は、スー・チー氏がド・ベック代表と握手する様子や、応接室のテーブルを挟んで向かい合う姿を写したもの。残る2枚は、6月19日に81歳の誕生日を迎えたスー・チー氏がケーキを切る場面とされる。

ド・ベック代表と握手するスー・チー氏(写真はミャンマー情報省提供)
81歳の誕生日ケーキを切るスー・チー氏(写真はミャンマー情報省提供)
「Happy Birthday Aunty Suu」の文字が記されたケーキ(写真はミャンマー情報省提供)

ICRCは同日の声明で、代表部の担当者が「被拘束者訪問に関する同委員会の基準・手続きに沿って」スー・チー氏と面会し、非公開で会話したことを確認した。AP通信によると、ICRCは面会場所や健康状態など詳細を明らかにしておらず、拘束下にある人物の生活状況や処遇を確認する目的で被拘束者への機密性の高い訪問を行うのが通例だとしている。国営メディアGNLMも同日、ド・ベック代表がスー・チー氏と面会した事実のみを簡潔に伝えた。

スー・チー氏は2021年2月の非常事態宣言発出で、国家顧問兼外相の職を追われ、複数の罪状により収監されていた。ミャンマー政府は4月30日、同氏を刑務所から「指定された住居」に移したと発表しており、その際にも一部関係者との面会写真が公開されていた。AFP通信は、ミン・アウン・フライン氏が制限的な選挙を経て文民大統領に就任した後、恩赦により刑期が短縮されたことも住居軟禁への移行の背景にあると伝えている。住居の所在地は今回も公表されていない。健康状態をめぐっては国際社会から懸念の声が上がっており、CNNなどによると、息子のキム・アリス氏は生存を証明するよう軍側に求める運動を展開し、今年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のフィリピンも5月、ASEAN特使による面会を求めていた。

タイ公式訪問直前の面会

今回の発表は、ミン・アウン・フライン大統領が8月6日からタイを公式訪問し、アヌティン首相と会談するのを目前に控えたタイミングとなった。タイはこれまでスー・チー氏との面会実現を働きかけてきたとされ、米国や中国もスー・チー氏の処遇に関する透明性の確保を求めてきた。

国際危機グループのリチャード・ホーシー上級アジア顧問は、政権が最初の面会相手としてICRC関係者を「意図的に選んだ」との見方を示し、外交的な接触には踏み込まずに健康・処遇への懸念に応える狙いがあったと分析している。ICRCは中立・独立の人道機関として被拘束者への機密訪問を各国で恒常的に実施しており、今回の面会もその通常業務の一環である公算が大きい。

スー・チー氏の処遇や政治的地位そのものに変化があったことを示す発表は政権側からなされておらず、2021年の政変以降、独立した第三者機関による確認がほぼ得られなかった状況に一定の風穴が開いた点は人道面での意義として評価できる一方、政治的な扉が開いたと判断するのは難しい。ミャンマー政権は今夏以降、タイやASEAN諸国との関係改善を積極化させており、今回の面会公開もこうした対外関与強化の一環とみられる。

※大統領府発表、情報省(MOI)公開写真、GNLM(国営紙)、ICRC声明、イラワジ(Irrawaddy)、AFP通信、ロイター通信、AP通信、CNNの報道を基に作成。

© ミャンマー総合研究所