202603.23
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ミャンマー連邦議会、5年ぶり再開 大統領候補指名は30日から 4月上旬の新政権発足へ

 ミャンマーの連邦議会は20日、首都ネピドーの議会議事堂で第3期第1回定例会の開幕式を行い、2021年の非常事態宣言以来5年にわたって停止していた立法府が正式に機能を再開した。大統領候補の指名手続きは30日に始まる。4月上旬の新政権発足に向け、政権移行の最終局面に入った。

 今議会は、25年12月28日から26年1月25日にかけて3段階で実施された総選挙の結果に基づいて構成される。民選議員420名と国軍割当議員166名の計586名からなり、開幕式では585名(出席率99.83%)が出席した。総選挙では親国軍系政党の連邦団結発展党(USDP)が下院231議席・上院108議席の計339議席を獲得し、改選対象議席の大半を制した。国・地方議会の合計では1,025議席のうち739議席をUSDPが押さえており、残る議席は21の少数政党が分け合っている。

連邦議会議長に上院議長が就任

 2008年憲法の規定により、連邦議会(ピダウンスー・フルッタウ)に専任の議長選挙は存在しない。下院・上院がそれぞれの第1回会合で各院の議長・副議長を互選し、上院議長・副議長が自動的に連邦議会議長・副議長を兼任する仕組みだ。この兼任は任期5年の前半30ヶ月間続き、後半は下院議長・副議長が引き継ぐ。3月16日の下院第1回会合では、USDPの党首で元軍人・元警察長官のキン・イー氏が下院議長に、現情報大臣のマウン・マウン・ウン氏が副議長に選出された。3月18日の上院第1回会合ではアウン・リン・ドウェ氏が単独候補として推薦され、全213名が出席した会合で上院議長に選出、同時に連邦議会議長に就任した。

 連邦議会議長となったアウン・リン・ドウェ氏は元陸軍中将で、今回の選挙でマンダレー管区選出の上院議員として当選したUSDPの政治家だ。21年の非常事態宣言後は国家行政評議会(SAC)の書記を25年7月まで務めた。その後は国家安全保障評議会のメンバーを務めた。ミン・アウン・フライン総司令官とは国防軍士官学校長時代からの上下関係にあり、最側近の一人と目されている。アウン・リン・ドウェ議長は開会演説で「本議会は2025年総選挙を通じて示された国民の意志を体現するものだ。真の規律ある民主主義と連邦制に基づく連合国家の建設が使命だ」と強調した。

大統領の選出手続きへ

 ロイター通信によると、議会当局者は大統領候補の指名を30日から開始すると発表した。下院民選議員・上院民選議員・上下両院の軍人枠議員の3グループがそれぞれ候補者を1名ずつ選出し、資格審査を経て全院投票で最多票を得た者が大統領に就く。残る2名が副大統領となる。実施日は4月初旬に発表される見通しだ。

 国家行政評議会(SAC)のゾーミントゥン報道官はこれに先立ち国営紙を通じ「3月に議会が招集され、4月に新政府が発足する」との見通しを示していた。国家行政評議会(SAC)は新政権発足後に制裁緩和と外国投資の拡大が進むとの見方を示している。

ミン・アウン・フライン氏の去就が焦点

 政権移行の最大の焦点は、代行大統領・国軍総司令官・国家安全保障委員会議長を兼務するミン・アウン・フライン上級大将(63)の処遇だ。同氏は昨年末、記者団に「議会招集後に大統領選挙のプロセスがある。その時点で議論するのが適切だ」と述べるにとどめており、自身の去就は明言していない。

 ミン・アウン・フライン氏が大統領に就任するとの見方が広く報じられているが、憲法上、大統領と国軍総司令官の兼任は認められていないため、就任する場合は役職変更が伴う。USDPのキン・イー党首は「自分は大統領になるとは思っていない」と公言しており、大統領職はミン・アウン・フライン氏が担うとの観測が強まっている。

 一方、同氏が総司令官を維持しつつ連邦顧問評議会議長に就き、信頼できる人物を大統領に据える「並走型」の権力構造を想定するアナリストもいる。政治アナリストのウー・チョー・フテット氏はCNIミャンマーに「現在も63の郡区が不安定な状況にあり、軍の役割は終わっていない」として、現首相ウー・ニョー・ソー氏が大統領に就く可能性に言及した。アラカン・フロント党のアエ・マウン議長はCNIミャンマーに「ミン・アウン・フライン氏が大統領に就任する公算が大きく、副大統領には軍議員ブロックから人物が充てられるとみている」と語った。

連邦顧問評議会に権限が集中?

 今回の政権移行で注目されるのが、2月3日にミン・アウン・フライン氏が署名・制定した連邦顧問評議会法だ。同法に基づき、国家安全保障・法の支配・対外関係・和平プロセス・立法事項にわたる広範な権限を持つ5名以上の委員からなる評議会が設置される。評議会は大統領が組織し、議長・書記を含む委員を任命する。

 ロイター通信が引用したシンクタンク「戦略政策研究所」のナイン・ミン・カン氏は「連邦顧問評議会は行政・立法・司法のすべての重要機能に対して権限を持つスーパーボディとなる可能性がある」と述べた。評議会議長のポジションが、ミン・アウン・フライン氏が大統領に就かない場合でも実権を維持する手段になり得るとの見方がある。

 ミン・アウン・フライン氏が大統領に就任した上で評議会議長を別途任命し、新たな総司令官を指名するシナリオを想定するアナリストもいる。ボーダーレンズ紙によると、現副司令官のソー・ウィン氏は退役後に評議会のポストに就くとみられており、後任総司令官にはイェー・ウィン・ウー将軍の起用が取り沙汰されている。

民族武装勢力との対話再開も

 ミン・アウン・フライン氏は大統領就任前に各地の民族武装勢力との対話再開を模索しているとも伝えられる。ボーダーレンズ紙によると、各勢力に和平交渉への参加を呼びかけており、2025年10月15日には全国停戦合意(NCA)10周年記念行事に自ら出席した。

 連邦議会の開会に合わせ、各地方議会も一斉に初日会合を開催した。ヤンゴン管区議会では123名が出席し、ウー・フタイ・アウン氏が議長、ウー・チョー・チョー・ソー氏が副議長に選出された。マンダレー管区議会では72名が出席し、ウー・アウン・チョー・モー氏が議長、ウー・チョー・ミン氏が副議長にそれぞれ選出された。

 今定例会では大統領・副大統領の選出に続き、連邦政府の組閣、各地域・州政府の組閣、議会各委員会および合同委員会の設置が予定されている。30日の候補指名を皮切りに、4月初旬の大統領選挙を経て組閣へと手続きが進む。ミン・アウン・フライン氏が大統領・総司令官・評議会議長のいずれの組み合わせを選択するかによって、新政権の権力構造は大きく異なる。今後数週間の動向がミャンマーの政治地図を決定づける。