アウン・サン・スー・チー氏、「指定住居」へ移送

場所は非公開―カソン満月の日に計1,519人を恩赦
ミャンマーのミン・アウン・フライン大統領は、4月30日(仏暦1388年カソン満月の日)、3件の恩赦令(大統領令第50〜52号)を発令。国内受刑者1,508人の釈放と外国人受刑者11人の恩赦・強制送還を実施した。これと別に、国営メディアは、アウン・サン・スー・チー氏(80歳)をネピドー刑務所から「指定住居」に移送したことを発表した。その場所は明らかにされていない。
スー・チー氏は2021年2月1日の非常事態宣言後に拘束され、汚職など19件の罪で合計33年の刑を言い渡された。その後23年に27年に減刑され、さらに今年4月のミャンマー正月恩赦(4月17日)で残刑の6分の1が減じられ、残刑は22年6ヵ月となっていた。今回の移送時点で5年以上の服役を経ており、残刑は約18年9ヵ月とみられる。
移送先の「指定住居」について、国営放送MRTVは具体的な場所を明示しなかった。軍に近い情報筋がラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによれば、副大臣級の住居に移されたとされ、3月から中佐率いる警護チームが同氏の警備を担当しているという。元所属政党・国民民主連盟(NLD)の幹部はAFPに対し「ネピドー市内のいずれかの場所と思われるが、正確な場所は分からない」と述べた。
国営テレビが公開した写真には、スー・チー氏が木製のベンチに座り、軍・警察の制服姿の担当者と並ぶ様子が映っており、数年ぶりとなる公開近影として注目された。
国連のスポークスマンは「指定住居への移送を評価する。信頼できる政治プロセスに向けた条件整備として意義ある一歩だ」と述べる一方、全政治犯の即時釈放を改めて求めた。中国外務省も「スー・チー氏はかねてより中国の旧来の友人であり、動向を一貫して注視している」とコメントした。
恩赦令(大統領令第50〜52号)の概要
今回の恩赦令は以下の3件で構成される。大統領令第50号(26年)は、全国の刑務所・拘置所・収容所で服役中の受刑者について、刑事訴訟法第401条第1項に基づき、残刑の6分の1を減刑するものである。大統領令第51号は、同条同項に基づき、国内受刑者1,508人の残刑を免除した(再犯時は免除刑期を加算)。大統領令第52号は、外国人受刑者11人を恩赦のうえ国外に強制送還するものである。
| 大統領令 | 内容 | 根拠 | 対象 | 条件 |
|---|---|---|---|---|
| 第50号 | 残刑の6分の1を減刑 | 刑事訴訟法第401条第1項 | 全国の服役者(一律) | — |
| 第51号 | 残刑の全面免除(恩赦) | 刑事訴訟法第401条第1項 | 国内受刑者 1,508人 | 再犯時は免除刑期を加算 |
| 第52号 | 残刑の全面免除+強制送還 | 刑事訴訟法第401条第1項 | 外国人受刑者 11人 | 再犯時は免除刑期を加算 |
州・地域別の釈放内訳(国内受刑者)
| 州・管区 | 釈放人数 |
|---|---|
| カチン州 | 49人 |
| カヤー州 | 5人 |
| カイン州 | 70人 |
| ザガイン地域 | 19人 |
| タニンダーリー地域 | 59人 |
| バゴー地域 | 110人 |
| マグウェー地域 | 41人 |
| マンダレー地域 | 257人 |
| モン州 | 91人 |
| ラカイン州 | 44人 |
| ヤンゴン地域 | 486人 |
| シャン州 | 142人 |
| エーヤワディー地域 | 146人 |
| 合計(国内受刑者) | 1,508人 |
遠方からの釈放者に対しては、各州・管区政府が車両を手配し、鉄道駅・港・バスターミナルへの移送を支援した。ヤンゴンのインセイン刑務所では男性受刑者302人・女性受刑者114人の計416人が釈放されたほか、外国人7人が入国管理省に引き渡された(同刑務所での釈放総数は423人)。
ミャンマー国家人権委員会(声明第5号、26年4月30日付)は今回の恩赦令を歓迎し、釈放者が国家の発展に積極的に参加することを強く促すとともに、外国人受刑者への恩赦と強制送還が「諸国間の平和的共存を促進する」ものだと述べた。
なお、今回の恩赦は、仏陀の誕生・悟り・入滅がいずれも旧暦カソン月の満月の日に起きたとされることを記念する仏陀記念日(Vesak Day)にあわせたもの。ミャンマーではこの時期に例年恩赦が実施される慣例があり、今回はミンアウンフライン大統領が4月10日に大統領に就任した新政権発足後、4月17日の正月恩赦(4,500人超)に続く2度目の大規模恩赦となった。
【出典】Global New Light of Myanmar(GNLM)、2026年5月1日付。大統領府令第50〜52号(2026年4月30日付)。ミャンマー国家人権委員会声明第5号(同日付)。Radio Free Asia(RFA)、Al Jazeera、AFP、NPR各報道(2026年4月30日〜5月1日)
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