MYANMAR FOCUS
【ニュース解説】新連邦政府 新首相にニョウ・ソウ氏 連邦政府閣僚も発表
2025年7月31日、国家防衛安全評議会（NDSC）は、2021年2月から継続していた非常事態宣言（命令No.1/2021）を、憲法第426条に基づいて正式に終了させる決定を下した。あわせて、国家安全と平和委員会の新設と、連邦政府（Union Government）の発足が発表された。新しい首相にはニョウ・ソウ（U Nyo Saw）氏が任命された。ミャンマー国営放送MRTVおよび中国の国営通信社・新華社（Xinhua）などが伝えた。
国家防衛安全評議会は、憲法第427条に基づき、行政・立法・司法の三権を暫定的に行使する体制を確立し、同第429条に則り6か月以内に総選挙を実施する方針を示している（The Global New Light of Myanmar, 2025年8月1日付）。
首相に任命されたニョウ・ソウ（U Nyo Saw）氏は、国家経済関係に強い影響力を持つ人物として知られ、かつて国有企業グループであるミャンマー・エコノミック・コーポレーション（MEC）のトップを務めていた経歴を持つ。国家計画や財務、法務の分野にも通じており、2021年以降は国家行政評議会（SAC）において制度設計や政策立案を担う役割を果たしてきたとされる（The Irrawaddy, 2025年7月31日付）。
新たな連邦政府の閣僚構成は、旧SACや政務局関係者を中心とした布陣となっており、内務、国防、国境問題、財政などの主要ポストには引き続き官僚や治安部門出身者が任命されている（Reuters, 2025年8月1日付）。
また、選挙管理委員会（UEC）に対する制度的統制は継続されており、国家安全と平和委員会が選挙管理や治安維持を担う構造となっている。
今回の再編は、憲法に基づいた手続きにより行われたものであり、国際社会に対しては「民政復帰への一歩」であるとする説明がなされている。一方で、政府構成の在り方に関しては、欧州連合（EU）やASEANの一部加盟国などから、「選挙の実施と並行して、政府構成の透明性と多様性を確保することが重要である」との声が上がっている（Reuters, ASEAN声明）。
首相職においてニョウ・ソウ氏が登用されたこと、そして非常事態体制が形式的に終了したことは、制度的な移行の一環と捉えることができる。今後、総選挙の円滑な実施とともに、多様な意見や専門性を反映した政府運営が期待される。
連邦政府閣僚一覧（2025年8月1日現在）
| 氏 名（読み） | 役職 | 前職 |
| Nyo Saw （ニョウ・ソウ） | 首相 / 国家計画省 | MEC（軍系企業）会長 |
| Tin Aung San （ティン・アウン・サン） | 大統領府大臣（第1） | 前運輸・通信大臣 / 元海軍司令官 |
| Ko Ko Hlaing （コー・コー・フライン） | 大統領府大臣（第2） | 元外務省大臣補佐 / 外交顧問 |
| Maung Maung Tint （マウン・マウン・ティン） | 大統領府大臣（第3） | 情報省幹部 / 元国営新聞編集長 |
| Tun Ohn （トゥン・オウン） | 大統領府大臣（第4） | 環境保護委員会メンバー |
| Mya Tun Oo （ミャ・トゥン・ウー） | 運輸通信大臣 | 元参謀総長 / 元国防大臣 |
| Maung Maung Aye （マウン・マウン・エイ） | 国防大臣 | 軍司令部所属中将 |
| Than Swe （タン・スウェ） | 外務大臣 | 元駐米大使 / 外交官 |
| Tun Tun Naung （トゥン・トゥン・ナウン） | 内務大臣 | 元国防副大臣 / 地域軍司令官 |
| Yar Pyae （ヤー・ピエ） | 国境・民族問題大臣 | 和平交渉委員長 / 国家統一協議会幹部 |
| Wah Wah Maung （ワー・ワー・マウン） | 投資・対外経済関係大臣 | 経済省次官 / 世銀連携担当官 |
| Thida Oo （ティーダー・ウー） | 連邦司法長官 | 法務省官僚 / 司法官 |
| Maung Maung Ohn （マウン・マウン・オウン） | 情報大臣 | 元ラカイン州首相 |
| Tin Oo Lwin （ティン・ウー・ルイン） | 宗教・文化大臣 | 文化保存局長 |
| Min Naung （ミン・ナウン） | 農業・畜産・灌漑大臣 | 農業省副大臣 |
| Hla Moe （フラ・モエ） | 協同組合・農村開発大臣 | 開発援助機構職員 |
| Khin Maung Yi （キン・マウン・イー） | 天然資源・環境保全大臣 | 元環境監督官 |
| Nyan Tun （ニャン・トゥン） | 電力大臣 | 電力公社技術局長 |
| Ko Ko Lwin （コー・コー・ルイン） | エネルギー大臣 | 元エネルギー省幹部 |
| Charlie Than （チャーリー・タン） | 工業大臣 | 元工科大学学長 |
| Myint Kyaing （ミィン・チャイン） | 入国・移住・人口大臣 | 入管局長 |
| Aung Kyaw Hoe （アウン・チャウ・ホエ） | 労働大臣 | 労働監督官 / 外国人雇用担当 |
| Chit Swe （チッ・スウェ） | 商務大臣 | 商務省次官 |
| Myo Thein Kyaw （ミョー・テイン・チャウ） | 科学技術大臣 | 科学技術庁長官 |
| Thet Khaing Win （テッ・カイン・ウィン） | 保健大臣 | 保健省副大臣 / 医師 |
| Jeng Phang Naw Taung （ジェン・パン・ナウ・タウン） | スポーツ・青少年 / ホテル観光大臣 | ホテル観光省副大臣 / カヤー州出身 |
| Myo Thant （ミョー・タン） | 建設大臣 | 建設局長 |
| Soe Win （ソー・ウィン） | 社会福祉・救援・再定住大臣 | 社会福祉省副大臣 |
| Nay Lin （ネイ・リン） | 連邦政府事務局長 | 大統領府事務局幹部 |
出典：Global New Light of Myanmar 2025年8月1日付