202609.27
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TIME誌の大統領取材にミャンマー政府反発

記事と一問一答、異なる二つの記録

 8月28日、ネピドー大統領府での一度の取材が、二つの異なる記録を残した。米誌TIMEが9月23日に掲載したチャーリー・キャンベル記者の人物ルポと、これに反発したミャンマー政府情報チームが翌24日、『Global New Light of Myanmar』(GNLM)を通じて公表した一問一答である。以下、両者をあわせて示す。

TIME誌記事の内容
 記事は一問一答形式ではなく、取材前の様子から書き起こした記者の現地取材記(人物ルポ)の形式を取る。大統領が米国を含む西側諸国との関係再構築を望み、経済制裁の緩和・見直しをトランプ政権に求めていると伝える一方、周辺国が接触を広げる中で西側が越境犯罪・中国の影響力への対応と民主主義・人権上の懸念とのバランスをどう取るかが課題になるとの見方を示している。2021年の非常事態宣言後続く内戦、徴兵制、経済の悪化、ロヒンギャ問題も詳しく取り上げ、国軍が広範な支配地域を失っている現状に言及している。

 拘束中のアウンサンスーチー氏については、大統領が自らの対応を「非常に寛大」と説明し、彼女が刑務所ではなく自宅で処遇されていると述べたと伝える一方、釈放や政治活動への復帰は約束しなかったとしている。このほか、トランプ氏に近いロジャー・ストーン氏が月5万ドルでミャンマー政府の対米関係構築を支援しているとの記述、元外交官や専門家の見解も含まれ、関与拡大が国内の政治状況の変化に直結するとは限らないとの見方も紹介されている。

政府側の反発
 ミャンマー政府情報チームは、TIME誌側から「ミャンマーの未来」をテーマとする取材の申し入れがあり、国家の結束や和平協議の成果を説明する機会として大統領が応じたと説明した。その上で、掲載された記事は実際の回答を正確に反映せず、他の人物への取材や批判的論評を含んでいたとして、TIME誌とキャンベル記者を非難している。ただし政府側の声明は、どの引用のどの語句が実際の発言と異なるのかを逐語的には示していない。The Irrawaddy等の報道によると、政府はキャンベル記者を要注意人物として扱う方針を示し、TIME誌の国内発禁措置にも動いたという。

一問一答を読む視点
 以下は、『Global New Light of Myanmar』(GNLM)が9月24日付で掲載した英語の一問一答全文の日本語訳である。取材は8月28日午前、ネピドー大統領府で行われた。取材の音声記録やTIME誌側が保有する原記録と照合した逐語録ではなく、TIME誌記事中の発言の一部は同文書に同じ表現では現れない。この差だけで発言の有無や改変を断定することはできず、双方をそれぞれ異なる目的と編集過程を経た資料として読み比べることが、今回の対立を理解する出発点となる。

一問一答
冒頭

 TIME誌・キャンベル記者: 本日はお時間をいただき、感謝します。大統領としての役割や指導方針、ミャンマーの現状、特に米国をはじめとする西側諸国との最近の関係について伺える良い機会だと思います。国内の最近の問題についても、率直にお話しいただければ幸いです。

大統領: お会いできてうれしく思います。TIME誌は著名で率直なメディアだと承知しており、そのため今回、取材をお受けすることにしました。TIME誌について知るにつれ、他の西側メディアと比べても良い印象を持っています。多忙のため日程の調整に時間を要したことをご理解いただければ幸いです。

TIME誌: もちろんです。大変お忙しいことは理解しています。本日はお時間をいただき、感謝します。

軍人から大統領へ

問: 選挙を経て、数十年にわたる軍務の後、現在ミャンマーの大統領です。文民としての指導にどのように適応していますか。

答: 私にとって、文民生活への適応は難しくありません。軍にはほぼ50年間勤務しましたが、両親は民間人です。軍人の家族は皆、軍の敷地内でともに暮らしています。だからこそ私たちは「家族」と呼ばれます。軍人が前線での任務に就く場合でも、家族は軍の敷地に残ります。つまり私たちはすでに文民社会に親しんでいるということです。軍は国の一部であり、同様に軍人の家族もミャンマー国民の一部です。

軍とその家族は毎週末、住民に寄り添いながら福祉を支える奉仕活動を行っています。私はラカイン州およびシャン州の司令官在任中、軍務だけでなく文民行政にも主に責任を負いました。2021年に非常事態が宣言された際には、政府の長として文民側の課題に対応しなければなりませんでした。文民生活に合わせるための大きな調整は必要ありません。

問: 文民生活でも、より軍隊式の指導を取っていますか。それとも指導方法は変わりましたか。

答: かなり異なります。軍の指導は単純明快で、命令を下すことに基づいています。しかし文民に対しては、説得し、意欲を引き出す方法を用いる必要があります。戦闘地域での軍事作戦においては指揮官の厳格さが求められますが、軍の指揮から文民の指導への転換は大きな変化であり、行政運営に当たっては親のような心構えを持つ必要があります。文民の側に移る際には、指揮官としての姿勢をすべて取り払うようにしています。

武力紛争と和平

問: ミャンマーは紛争が続いています。恒久的な和平に向けた計画は。また、国軍による過剰な武力行使との最近の疑惑は、この過程を妨げると思いますか。

答: 和平は我が国にとって極めて重要です。独立回復以来、国内では武力紛争が続いてきましたが、これは植民地時代の分割統治政策の帰結であり、民族間の誤解や政治思想の違いを生んだものです。これらは平和的に解決されるべきものです。

独立回復後、まず議会制を採用し、その後長年にわたり中央集権的な統治体制を実施しました。中央集権体制のために国民の間に政治的な不満が生じ、1988年の蜂起を経て、2011年には複数政党制の民主主義へと移行しました。民族側が求める自治と民主主義は2008年憲法にも盛り込まれています。和平協議に努め、2015年には一部の民族武装組織と全国停戦協定(NCA)を締結しました。NCAに従い必要となる憲法改正案はすでに議会に提出しており、議会が審議のうえ、しかるべき時期に改正します。

2021年の事態の後、ミャンマーは暴力的な攻撃を経験しましたが、国民は民主主義を望んでおり、私たちは選挙を成功裏に実施しました。新政府は発足後100日以内に、すべての武装勢力に和平協議への参加を呼びかけました。現時点で4,000人以上の若者が合法の場に復帰し、既に帰宅しています。その大半は民族武装組織出身の、教育水準の高くない若い男性で、一部の政治家に扇動されて武装組織に加わっていました。彼らがジャングルで武器を持って戦う姿は痛ましく、本来教室にいるべきだと考えています。私は大統領としての5年の任期中、和平プロセスを最優先課題としており、必ず成功すると確信しています。

※「過剰な武力行使」の疑惑そのものへの直接の説明は、この回答には示されていない。

制裁と経済政策

問: 国際的な制裁により、ミャンマーの数億ドル規模の資金が凍結され、あなたやご家族も対象となっています。経済的孤立は国民にどのような打撃を与えていますか。また、制裁対象から外れるためにどのような譲歩を用意していますか。

答: 制裁により銀行制度が打撃を受け、外貨口座での取引も制限されています。対象を絞った制裁と規制により、まず外国直接投資が減少し、雇用機会も少なくなりました。取引上の障壁により、国内の需要を満たすための物資輸入も困難になっています。制裁が経済部門に一定程度の影響を与えていることは事実です。食料安全保障については食料増産の取り組みを行っており、それほど深刻ではありませんが、生産面では制裁により多くの困難に直面しています。

※制裁解除に向けて具体的にどのような譲歩を用意するかは、この回答には示されていない。

問: ミャンマー国民の利益のために経済を発展させる計画は。

答: 私たちは食料安全保障を十分に確保できる立場にあります。ミャンマーは人口の70%が農村部に居住し、そのうち50%が農業・畜産業に従事する、強靭な農業国となることを目指しています。綿花やゴムをはじめとする農業関連産業を発展させ、原材料のまま輸出するのではなく、より付加価値の高い製品の生産へと移行することで、農村住民の生活を向上させます。また、経済部門の90%を占める零細・中小企業(MSME)の振興にも取り組みます。

米国との関係

問: 米国政府はこれまで、あなたの政権にかなり批判的でした。トランプ政権にミャンマー国民のためどのようなことを望みますか。

答: 米国とミャンマーは1947年9月に外交関係を樹立しており、まもなく80年を迎えます。地理的には約13,000キロメートル離れていますが、歴史的に友好関係を維持してきました。ミャンマーが様々な政治的移行を経験する中で、米国との関係も浮き沈みを経験してきました。朝鮮戦争やベトナム戦争の際、ミャンマーは非同盟・中立政策を維持し、これらの紛争には関与しませんでした。ミャンマーは現在複数政党制の民主主義を実践しており、この政治的移行期にあるミャンマーに対し、米国が建設的な支援を提供してくれることを期待しています。安定と和平の促進、国の発展と民主主義の実践への支援について、米国からの支援を歓迎します。

米国には、ミャンマー国内の暴力につながりかねない資金その他の支援、また国内での暴力的な攻撃を助長・扇動する個人や団体への支援を防止するよう求めたいと思います。第二に、経済制裁については、米国にミャンマーの現状と最近の動向を考慮するよう求めます。米国の豊富な経験を踏まえ、ミャンマー特有の状況を慎重に考慮したうえで、現在科されている経済制裁の緩和または縮小をご検討いただければ幸いです。

ラカイン州と避難民

問: 確認させてください。制裁の多くは、ラカイン州におけるジェノサイドの疑惑を含む人権侵害の疑惑を受けて科されたものです。バングラデシュに逃れた避難民の帰還について、最近何か進展はありましたか。これは米国が提起している懸念の一つです。

答: 個人制裁の対象となった人々は、自らが国と国民の最善の利益のために行動していると考えていると言えます。国外の人々はその行動について異なる見方を持つかもしれませんが、私たちの立場から言えば、彼らは自らが信じるミャンマーの最善の利益に従って責務を果たしています。ラカイン州の状況について、私たちの立場は、ベンガル人住民に対して意図的に不当なことを行ったことはないというものであり、私たちの行動は国の主権と安全、国民の安全を守ることを目的としたものでした。ぜひミャンマーを訪れ、現地の状況をご自身の目で確かめていただきたいと思います。

避難したベンガル人の問題については、国内法およびミャンマー・バングラデシュ間の二国間合意に従って対応しています。これらの人々の存在を認識しており、適切に対処することを約束しています。現時点では実務上の課題や制約が多数存在しますが、既存の二国間合意を通じてこの問題を解決することに引き続き取り組んでいます。

※「ベンガル人」は回答で使われた呼称である。質問が求めた帰還の具体的な進展や日程は、この回答には示されていない。

ロシアとの関係

問: ミャンマーとロシアは軍事協力協定を締結しました。モスクワとの関係をどのように説明しますか。

答: 私たちは1947年9月に米国と、その直後の1948年2月16日にロシアと外交関係を樹立しました。両国は地理的には約6,000キロメートル離れています。歴史的に、ロシアはナチスとの戦いにおいて重要な役割を果たし、ミャンマーもまた国の独立のためファシズムと戦いました。両国とも大きな政治的変化を経験してきましたが、こうした変化にもかかわらず、ロシアとの関係は一貫して堅固です。

軍事協力協定自体は、それほど重要な事柄ではなく、主に訓練と能力構築を対象としたものです。ミャンマーが困難な状況に直面するたびに、ロシアは奨学金の提供や非商業的な技術支援など、様々な形で支援する用意を示してきました。現在、両国は教育、医療、原子力、宇宙技術など複数の分野で協力しています。私自身もこれらの分野での協力を求め、強化するため、ロシアを複数回訪問しています。

問: 確認ですが、目指しているのは民生用の原子力発電ですね。ロシアの支援によりミャンマーで核抑止力を開発する可能性はありますか。

答: 原子力技術は平和的な民生目的にのみ利用する意図です。現在の計画は、民生用の原子力発電のための出力210メガワットの小型モジュール炉に焦点を当てています。軍事目的で利用する意図は一切なく、関連する国際的な規則・規制を完全に順守します。

中国との関係

問: 北京への公式訪問の際、中国政府と18件の覚書に署名しました。こうした中国からの投資はミャンマーにとってどれほど重要ですか。また、国境地帯での武器や麻薬をめぐる問題が最近生じていますが、それらは解決したと確信していますか。

答: 隣国として、ミャンマーと中国は良好な関係を維持しています。中国はミャンマーにとって最大級の外国投資国の一つです。同時に、国境地帯の平和と安定に関する課題も存在し、外交ルートを通じた対話と交渉によってこれらに対処しています。前向きな進展が見られた事案もあれば、依然として協議中の事案もあります。中国からの投資はミャンマーへの全外国投資の中でも最高水準にあり、ミャンマーの経済発展に大きく貢献し得ると考えています。

私たちはまた、人民元とチャットを用いた直接決済の仕組みを導入しました。米国をはじめとする西側諸国による経済・金融制裁への対応として、ミャンマーと中国は人民元・チャット建ての直接決済により二国間貿易を円滑化することで合意しました。

問: それによってミャンマーが中国への依存を強め、事実上、貿易可能な唯一の大国が中国になってしまうことを懸念しませんか。

答: 私たちは中国のみに依存しているわけではありません。ミャンマーは国際社会との間で外交関係を維持し、貿易・経済活動を行っています。中国は隣国であるため関係を重視していますが、インドについても同様です。ミャンマーは中国とインドという二つの大国の間に位置しています。「一帯一路」構想のもと中国・ミャンマー経済回廊で協力していますが、同時にすべての国からの投資と協力を歓迎しています。私自身、経済協力と発展の機会を模索するため、インド、タイ、ベトナム、ロシア、ベラルーシなどを訪問してきました。中国は隣国であるため協力が比較的容易であり、それゆえ中国との協力がより大きなものとなっています。

アウンサンスーチー氏

問: ドー・アウンサンスーチー氏は現在拘束されており、あなたの指導下で刑期は33年から18年に減刑されました。残りは13年です。将来、恩赦の可能性はありますか。

答: 私たちはこの事態を避けるべく最善を尽くしましたが、避けることはできませんでした。年齢にかかわらず、法律に従って措置を取らねばなりませんでした。最初かつ最も深刻な問題は選挙不正でした。2021年の事態を受けて私が国家の責務を引き継いだ後に行われた調査の結果はウェブサイト上で公開しており、選挙過程には重大な不正があったことが確認されています。また贈収賄などの事案も確認しましたが、様々な事情を考慮し、追及しなかったものもあります。年齢を考慮し、私の権限で刑期を短縮しました。しかし今後どうなるかを予測することは困難で、恩赦その他の措置をさらに検討するかどうかは、その時点での状況、本人の行動や態度によります。

彼女には快適な生活環境を提供する手配をしており、刑務所施設ではなく住居に収容しています。赤十字国際委員会(ICRC)代表者との面会も認めており、その面会の写真は公開されています。

問: 確認ですが、仮に釈放された場合、何らかの政治的役割を担うことは認められますか。

答: それは全面的に、その時点での本人の行動と状況によります。予測することはできませんが、条件が整えば、さらなる措置を検討する機会があるかもしれません。

生い立ちと将来像

問: マンダレーで育たれたと理解しています。お父様は芸術家だったとのことですが、若い頃はどのようなことに関心をお持ちでしたか。

答: 父は芸術家であり、両親は教育を強く重視し、私が学校に通うよう取り計らってくれました。幼少期には仏教の見習い僧となり、仏教の教えの下で育ちました。仏教の教えでは年長者を敬い、年少者には親切と思いやりをもって接するよう教えられます。年長者からも大きな配慮と導きを受けました。

読書は常に好きで、新聞、雑誌、小説などあらゆる種類の書物を読み、図書館にもよく通いました。友人たちと一緒に読書をすることも楽しみ、一人でいることはほとんどなく、常に友人に囲まれて共に議論し、助け合って問題を解決してきました。こうした習慣は、その後の人生における職務や責務の遂行に大いに役立ちました。

問: 人と一緒にいることを好んだので、大きな共同体の一員になろうと軍に入ることを決めたのですか。

答: それは私の関心事でした。

問: 今は国の運営で大変お忙しいと思いますが、余暇には映画やゴルフなど、何か楽しまれていることはありますか

答: はい、余暇にはゴルフや散歩を楽しんでいます。

問: 最後にもう一つ質問です。ミャンマーの歴史において、どのような遺産を残したいとお考えですか。

答: 祖国が平和で安定し、繁栄した国になることが目標です。強固な民主主義体制の確立への道を開き、国民がより良い教育を受けられるようにしたいと考えています。民主主義はミャンマーの文化と実情に適したものであるべきであり、民族社会の権利を尊重し、連邦制を支えるものであるべきです。任期中、これらの目標の実現に全力を尽くします。


資料:TIME誌・チャーリー・キャンベル記者の記事「Exclusive: Myanmar’s Dictator Wants to Rebuild Ties With the West」(2026年9月23日、https://time.com/article/2026/09/23/myanmar-president-interview-Min-Aung-Hlaing/)/ミャンマー政府情報チームの声明(The Irrawaddy、DVB各紙報道)/『Global New Light of Myanmar』「President’s Exclusive Interview with Time Magazine」(2026年9月24日付、一問一答全文の邦訳)

一問一答は上記GNLM掲載文の翻訳であり、TIME誌側の原記録と照合した逐語録ではない。